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ブックレビュー

文明と戦争 人類二百万年の興亡(上・下) アザー・ガット著、石津朋之・永末聡・山本文史監訳、歴史と戦争研究会訳


 原書は2006年に出版された大著で、日本では2012年に単行本で出版された邦訳版の待望の文庫化。著者はテルアビブ大学政治学部エゼル・ワイツマン国家安全保障講座担当教授で、軍事史、戦争・戦略研究の第一人者だ。

 上巻は人類の「戦う動機」について生物学、人類学、考古学、歴史学、社会学、政治学から多角的に検証し、部族間から国家間へと進化した戦争を分析する。

 下巻は軍事革命による戦いの規模と形態の変化に着目しながら、総力戦までに発展した近代の戦争を分析。ナショナリズムの台頭やイデオロギーの対立の観点からも戦争の原因を精査し、核兵器、無差別テロ、冷戦以降の現代までを総括する。

 監訳者の石津朋之氏は防衛研究所戦史研究センター長で、下巻巻末の解説を執筆。本書について「戦争・戦略研究と古代史研究、平和研究を含めたその他の分野の研究の間の『橋渡し』の役割を果たし得る」とした上で「本来、最も学際的な研究が必要とされる戦争という大きな社会現象を考えるための一つのモデルを提示している」と評している。

 (中央公論新社刊、上・下巻各1980円)

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