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ブックレビュー

危機迫る日本の防衛産業 桜林 美佐著


 「日本に『防衛産業』は存在するのか」――。

 およそ10年近くにわたり、この国の「防衛産業」と向き合って来た著者が投げかけた言葉は重い。

 防衛問題に精通したジャーナリストが、「防衛産業」「防衛予算」「防衛装備品」などの用語を初心者にも分かりやすく解説してくれる本書。「『防衛産業』は陸・海・空の次に存在する『第4の自衛隊』」だからこそ、すでに国内で防衛事業から撤退・または倒産などが確認された関連企業だけで約100社以上にも及んでいる現状は、まさに「危機的」であるといえる。

 敗戦後に一度は崩壊した国内の防衛産業。それでも当時の技術者たちは、戦後の防衛産業復活のために密かに機械や図面を隠し持っていたというエピソードには、この国の原点である「ものづくり」の精神と日本人の矜持が伺える。

 社会的な風当たりの強さを感じつつも発展し、未だに政治や世論の狭間でもがき苦しむ防衛産業の現状を本書で網羅すれば、年末策定される「中期防衛力整備計画(中期防)」など戦略3文書の理解への一助にもなる。

 (潮書房光人新社刊、902円)

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