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ブックレビュー

国難に立ち向かう 新国防論 河野 克俊、兼原 信克著


 前統合幕僚長の河野克俊氏と元国家安全保障局次長で同志社大学特別客員教授の兼原信克氏が、かつてなく厳しい安全保障環境下にある日本のあるべき国防の姿について語り合う。

 暴力で主権国家を踏みにじる蛮行に走るロシアと戦うウクライナ。その現状分析から日本の国防体制のさまざまな矛盾点をあぶりだす第1部「ウクライナの戦い」。台湾併合の野望を隠さない中国とミサイル発射を繰り返す北朝鮮。その隣国である日本が果たして国民を守れるのかを問う第2部「東アジアの戦い」。憲法9条や非核三原則を盾に軍事研究を排除しようとする国内の「赤い壁」を告発し、防衛体制のあらゆる不備を指摘する第3部「赤壁の戦い」で構成される。

 一読して日本の体たらくに失望を覚えるが、それだけではないのが本書で、二人の専門家はこれらの問題に対して明確な処方箋を提示してくれる。

 漫画「鬼滅の刃」の1シーンを例に挙げ、兼原氏が語った「自国の国民の生殺与奪の権を他国に委ねるなど、責任ある政治指導者がしてよいことではありません」という言葉が本書のテーマを象徴している。

 (ビジネス社刊、1760円)

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