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ブックレビュー

「吉田ドクトリン」を越えて ―冷戦後日本の外交・防衛を考える 西原 正著


 2000年4月から6年間にわたって防大学校長を務め、現在は平和・安全保障研究所副会長の著者が自らの過去の論文、論評などをまとめた一冊。一流の国際政治学者として、外交・防衛について考察し続けてきた軌跡が読み取れる。

 4部構成で、1部では著者が1978年に最初に書いた論文「『吉田ドクトリン』の果実をいつまで期待するのか」の邦訳を掲載。そのほか米紙掲載論評や国際会議などでの発言を厳選して掲載している。

 2部では過去に執筆した学究的な論文3点を収録。3部のタイトルは「新聞、雑誌論評に見る日本と東アジアの安全保障動向」。防大退職後、平和・安保研に勤務しながら新聞、雑誌などに発表してきた論評の中から36本を選んで再掲載。最後の4部は防大学校長時代に各誌紙に寄稿した防大についての原稿を再録している。

 ほぼ時系列で紹介される論文の数々を読んでいくと、経済復興を優先して軽武装主義でいくとした「吉田ドクトリン」の国防軽視への強い疑問が一貫していることに気づく。4部で見せる教育者としての温かい視点とともに印象に残る。

 (内外出版刊、2420円)

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