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ブックレビュー

コントレイル FSXとは何だったのか 山田 秀次郎著


 1985年、F―1の後継となる次期支援戦闘機(FSX)の国内開発にむけた予算要求の段階に至って、米国は「協力」を申し出た。国防長官・防衛庁長官の会談が続くうち、大きな選択肢の「国内開発」は「開発」に書き換えられ、翌年には「F―16を基盤とする共同開発」で両国は合意する。だが経済摩擦が激化する89年、米商務省と米議会の巻き返しが始まり、ブッシュ米大統領にFSX合意の見直しを迫る……。

 これを渦の外から描いた解説や提言は多いが、渦中にいた人は日米共に黙して語らない。「これではいけない」と航空実験団(当時)、技本、空幕でF4―EJ改を育て、FSXに取り組み、臨時編成のFSX開発室長も務めた著者が、貴重な体験が航跡(コントレイル)のように消えぬよう、公開論文や講演録を基にまとめたのが本書である。

 防衛組織の戦闘機開発に関わる欠落機能なども考察されており、今話題のFXにも参考になるだろう。いずれも技術者ならではの視点に基づく指摘だ。(幻冬舎刊、2640円、電子版1100円)徳田八郎衛(元防大教授)

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