創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

吾輩は後期高齢者の 日本国憲法である 西 修著


 夏目漱石の「吾輩は猫である」にちなみ、日本国憲法を「吾輩」に見立てて1人称で憲法の誕生から現在までの間に生じた問題点を語る解説本。月刊「正論」に2017年5月から9月号に掲載された「吾輩は日本国憲法である」をまとめた第1編と、憲法施行から75年の紆余曲折を描いた第2編とで構成される。

 75歳を迎えた「吾輩」は人間でいえば後期高齢者。大抵の人は一度はどこかを治療しているものだが、「吾輩は一度も治療(改正)を受けていない」「さすがにくたびれた。節々が痛む。自ら矛盾を感じることが年齢を重ねるごとに多くなってきた」とぼやく。

 著者の趣味の落語も織り交ぜて語られる部分もあり、時にユーモラスで読みやすい文章だが、内容は詳細だ。特に極東委員会が憲法誕生にいかに関わったのか、どのような審議が行われていたのかについて、類書にないほど深く踏み込んでいる。

 自衛隊創設から日米安保条約、PKО協力法、平和安全法制の成立など、時系列で語られるそれらの経緯が現行憲法の矛盾を浮き彫りにする。ぜひとも手に取って欲しい一冊だ。

 (産経新聞出版刊、1760円)

最新ニュースLATEST NEWS