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ブックレビュー

今を生きる思想 ハンナ・アレント 全体主義という悪夢 牧野 雅彦著


 ドイツに生まれ、ナチスの迫害を逃れて米国に亡命したユダヤ人の女性哲学者で思想家のハンナ・アレント(1906~75年)。その名を冠した映画(2013年)で「悪の凡庸さ」について知り、興味を持った人も多いのではないだろうか。

 本書は、有名な思想や哲学を「現在に応用する」ことを目指してコンパクトな約100ページで紹介する「現代新書100(ハンドレッド)」シリーズ創刊第1号。アレントが警鐘を鳴らし続けた「全体主義」の恐ろしさに焦点を当てる。

 著者は「グローバリゼーションの名の下で進むモノ、カネ、人の国境を越えた移動や交流は、経済的な格差の拡大やそれに伴う民族、人種間の対立を生み出しつつある」と指摘。科学技術の進展はこれまでの人間の生活の在り方を変容させつつあり、「全体主義が形を変えて再び登場する危険はむしろ拡大している」――と読み解いていく。

 ロシアによるウクライナ侵略など、世界中が不安定さと不確実性に揺れる今だからこそ、激変の時代を生き抜くために読んでおきたい一冊だ。

 (講談社刊、880円)

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