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ブックレビュー

ウクライナ侵攻と情報戦 一田 和樹著


 「今世紀の戦争は『ハイブリッド戦』あるいは『超限戦』という、新しい戦争の形態を取っている」――。

 ウクライナ侵攻が続く現在、ロシアによる自他国への世論誘導工作とプロパガンダ戦略は世界に大きな分断をもたらしている。

 本書では、サイバーセキュリティの専門家である著者が、それら情報戦の実相と、現代の民主主義が危機的状況にあることを海外研究機関の各種報告から読み解いていく。

 世界はグローバルノース(欧米、韓国、日本=民主主義国)とグローバルサウス(その他の国々)との対立の下、グローバルノース陣営は今や世界の少数派になっている。日本から見えている世界のほとんどはアメリカを介しているため、日本ではグローバルサウス側の視点がほぼ見えていないと著者は指摘する。

 そして、もはや独裁主義や権威主義が世界の多数派になった今、それらと親和性の高いSNSなどによる監視やネット世論操作などのいわゆる「監視資本主義」の前に、民主主義陣営の劣勢は避けられないとし、「従来の形で民主主義を存続させることは難しい」と警鐘を鳴らしている。

(扶桑社新書刊、990円)

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