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ブックレビュー

続 蒼海の碑銘 ――海に眠る戦争の記憶 写真 戸村 裕行


 青々とした海の底に静かに眠る戦闘機や軍艦――。かつて威容を誇ったであろう鋼鉄の塊には貝や藻が付着し、魚が行き交う魚礁となる。こうした海底に沈んでいる艦船や航空機などを「レック(Wreck)」と呼ぶ。本書は先の大戦で激戦の舞台となったソロモン諸島やグアム、パラオなどに残るレックを紹介する写真集の第2弾だ。

 撮影は水中写真家の戸村裕行氏。世界中の海に潜りさまざまな水中景観をカメラに収めてきた。「零式艦上戦闘機五二型乙」やアメリカの掃海駆逐艦「エモンズ」、軍に徴用された民間船などを美麗な写真と解説で紹介する。印象的だったのは特設巡洋艦「清澄丸」。船に重油が溜まっており、環境への影響の懸念から始まった漏油回収作業が2022年現在も続いているという。

 レックの中に残された茶碗やフライパン、将棋の駒なども興味深い。日常の一コマのようなごくありふれた物が、70年以上も前の戦争を身近なもののように感じさせる。

 レックは現在、経年による劣化で徐々に崩落しつつある。こうした水中戦跡を今後どうするか。ただの“戦争回顧”に終わらない、さまざまなことを考えさせられる一冊だ。 (イカロス出版刊、3150円)

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