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ブックレビュー

陰の戦争 エリザベス・ヴァン・ウィー・デイヴィス著 川村 幸城訳


 著者は中国の専門家として米中関係をはじめ、国連海洋法条約など多国間のガバナンスをテーマとしてきた研究者。近年はサイバースペースという新しい公共空間のガバナンスと主要国の政策に注目し、サイバーセキュリティーに関する研究論文を発表している。

 本書はサイバー戦の三大プレーヤーである米国、ロシア、中国のサイバー政策について、▽戦略▽制度・組織・実施機関▽諜報▽攻撃――などの観点から比較分析。

 サイバー戦の実態を「陰の戦い」という概念で捉え、三大国の思惑と戦略思想を明らかにした上で、サイバー戦をめぐる普遍的なガバナンス作りに向けた知的作業の第一歩を促すとともに、日本を含む先進諸国において強力なサイバー防衛政策の必要性を訴えている。

 訳者は陸自通信学校(久里浜)に勤務する1陸佐で、安全保障学で博士号を持ち、分かりやすい翻訳に定評がある。

 巻末には訳者が独自に作成した三大国のサイバー政策の比較一覧表を掲げるなど、日本の読者の理解がさらに深まるよう、随所に工夫がなされている。

 (中央公論新社刊、2970円)

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