創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

　「もし生まれ変わることができれば、次回は防衛大学校に入りたいと密かに思っています。合格すれば、ですが」――。

　９年間にわたって防大校長を務め、最後の卒業式でこう述べた著者の防大への熱い思いが綴（つづ）られた１冊。

　著者が防大校長就任の打診を受けたのは２０１１年２月末。直後に東日本大震災が発生し、隊員たちの無私の活動ぶりや、折木良一統幕長（当時）の堂々とした態度に感動。そうした人物を育てた防大の校長を務めることに名誉を感じ、就任への思いを固めた。

　第９代校長として防大、防大生の日常に触れた経験談はどれも魅力的だ。８人１部屋の全寮制、朝６時にラッパで起床、髪型、恋愛、校友会活動……。一般大学にはない厳しい学生生活を送りながらも、多くの卒業生が「生まれ変わっても防大に入りたい」と口をそろえるというその魅力が本書を読むと腑に落ちる。

　密度の濃い青春時代をともにした同期との絆の強さは、一般大学では得がたいものだろう。校長として防大生と９年間をともに過ごした著者の防大への愛情が凝縮した１冊だ。

　（中央公論新社刊、２２００円）