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ブックレビュー

「東アジアの米軍再編 ――在韓米軍の戦後史」 我部 政明、豊田 祐基子著


 第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、冷戦、テロとの戦い――。この5つの戦争を背景に日本、韓国で行われてきた米軍再編が東アジアの安全保障にどのような影響を与えてきたのか。

 我部政明琉球大学名誉教授、豊田祐基子ロイター通信日本支局長が、朝鮮半島情勢の変化とそれらに応じた米軍再編が日本、米国、韓国に与えた影響を解き明かす。

 日本占領を主要任務とした米極東軍とトルーマン政権が米国の利益として朝鮮半島に見出していたこと、アイゼンハワー政権の進める朝鮮戦争後の米軍再編に関する李承晩政権との確執などを詳述。こうした戦後の半島情勢に応じた在韓米軍の削減と韓国軍の作戦統制権をめぐる構図を明らかにしている。日本に駐留する在日米軍の再編ともリンクしており、読者の興味を引く。

 在韓米軍の駐留体制の成立過程をつぶさに検証することで、米韓双方の相克を浮き彫りにする。さらに在韓米軍と在日米軍の連動性から日韓の安全保障上のつながりを俯瞰(ふかん)している。

 東アジアの米軍をめぐる日米韓の関係を掘り下げる本書は、中国、台湾を含めたアジアの安全保障上の諸問題に新たな視点を提供するだろう。

 (吉川弘文館刊、2970円)

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