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ブックレビュー

「就職先は海上自衛隊 女性『士官候補生』誕生」 時武 里帆著


 元虚弱児童でカナヅチ、一般大学の文学部を卒業したおっとり文系女子が、広報ビデオで見た海上自衛隊の純白の夏服にハートを射抜かれ、衝動的に海自幹部候補生学校に入校。何もかもが初めてのハードな日々の中で奮闘する。

 著者は女性自衛官として初めて遠洋練習航海に参加した元3海尉で、遠航の後、練習艦「みねぐも」に勤務し、夢だった小説家になるため退職した。本書は自身の実体験に基づくだけに、幹部候補生たちの日常が手に取るように分かりやすく描かれている。

 古鷹山登山、射撃訓練、結索、短艇競技、防火実習、練習船実習の陸測艦位訓練など、候補生の日常は多忙を極める。体力にも運動神経にも自信のない著者は、同期に助けられながらも何とかこなしていくが、最大の難関は朝から夕方まで15キロを泳がねばならない8マイル遠泳。カナヅチの著者は果たして泳ぎ切れるのか。

 ハードなカリキュラムにも関わらず、文章が軽快でユーモラス。“普通の女の子”の感覚で見た同期たちの姿、教官たちの厳しさとやさしさが心温まる読後感を与える。続巻の「文系女子大生の逆襲篇」が楽しみになる。

 (潮書房光人新社刊、924円)

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