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ブックレビュー

「ゼレンスキー 勇気の言葉100」 清水 克彦著


 コメディアンから大統領へ――。さながらドラマのような転身を遂げてきたウォロディミル・ゼレンスキー。ロシア軍の侵攻直後から力強いメッセージをSNSなどで発信し続け、国際社会の注目を集める。本書はゼレンスキーの発言から100の言葉を拾い集め「共感させる言葉」など五つの種類に分類、それぞれに解説を加えている。

 ゼレンスキーの言葉で際立つのはシンプルさ、そして、語りかける相手や状況に応じてカスタマイズする柔軟さだ。著者は「サウンドバイト(メディアで引用されやすい短い発言のこと)の達人」と評する。例えばロシア侵攻直後に「私たちはここにいます。この国を守ります」と発し、ウクライナ国民や軍を勇気づけた。EU議会に支援を呼びかけたときは「砲撃が続いているので数分しかお話できない」と、短いフレーズに戦争のリアルさを滲ませた。

 著者は、これらの発言から有事の際のリーダーとしての振舞いと、ロシアによるウクライナ侵攻の本質が分かると指摘する。「言葉の力」で戦う大統領の姿に勇気を与えられると同時に、世界情勢を巡る安全保障上の課題についても理解を深めることができる。

 (ワニブックス刊、1430円)

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