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ブックレビュー

「GHQは日本人の戦争観を変えたか 『ウォー・ギルト』をめぐる攻防」 賀茂 道子著


 連合国軍総司令部(GHQ)の民間情報教育局(CIE)が実施した「ウォー・ギルト・プログラム」について、これまで虚実入り乱れた内容が語られることが多かった。本書は従来の言説を検証し、その実像を示すことを試みた一冊。

 名古屋大学大学院の特任准教授で占領史研究などを専門とする著者は、評論家の江藤淳が保守論壇で「洗脳」言説を広げていったことに対し、学術的な根拠に基づくものはないとした。また占領者が一方的に押し付けたものではなく、時として日本人の関与もあったとした。

 GHQは戦後、日本国民に贖罪意識が欠如しているとして、「ウォー・ギルト」を認識させる必要があると考え、CIEが「軍国主義」と「情報を隠蔽された国民」という対立構造を作り出した。隠された「真相」を新聞やラジオで暴露する手法を展開し、集まった投稿を採用する「真相箱」という番組を制作。双方向型の情報発信を行った結果、占領者だけでなく、時として日本人も関与することとなった。

 著者は「ウォー・ギルト・プログラム」の最大の影響は、人々がもともと持っていた「軍国主義者が悪い」という実感にお墨付きを与えたことにあると指摘。それが戦争を絶対悪とする「絶対的平和主義」につながったとしており、日本人の戦争観の変遷も読み取れる。

 (光文社刊、990円)

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