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ブックレビュー

「世界と日本を目覚めさせた ウクライナの『覚悟』」 倉井 高志著


 著者は2019年1月から21年10月まで駐ウクライナ日本大使を務めた元外交官。

 ロシアによる軍事侵略に対し、ウクライナがかくも勇猛かつ頑強に抵抗し続けているその力の源泉はどこにあるのか、徹底抗戦の背景を解説する。

 著者は、ロシアとウクライナの関係史をひもときながら、プーチン大統領の思考の本質にある「ウクライナのアイデンティティの否定」こそが、ロシアによる軍事行動のハードルを下げた心理的な要因であったと分析。

 21世紀の今日においてもなお、ある日突如として、圧倒的な力を持つ権威主義国家が全く不合理な侵略を仕掛けてくる現実を前に、これに抵抗できるかどうかは、ひとえに犠牲が出ることも「覚悟」の上で断固たる決意をもって戦うことができるか否かにかかっていると指摘する。

 ロシアの政治・経済・軍事について世界で最も深く、かつ実体験に根ざした見識を持つウクライナ。「力には力で対処するしかない」という当然の事実が突き付けられる中、日本の安全保障を考える上で、ウクライナの知見が大いに役立つことは間違いないだろう。

 (PHP研究所刊、1760円)

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