創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

「ロシア・ウクライナ戦争と日本の防衛」 渡部 悦和、井上 武、佐々木 孝博著


 本書は渡部悦和元陸将、井上武元陸将、佐々木孝博元海将補の3人による、ロシアのウクライナ侵略についての討論をまとめたもの。3人は、退官後もそれぞれ専門分野で積極的に著作を発表しており、今回の戦争についても豊富な知見をもとに分析している。

 一般にロシア・ウクライナ間の戦争については、市民の被害状況や、ハイブリッド戦的な側面から報じられることが多い。しかし本書は「あらゆるドメイン(領域)を駆使する戦い」、つまり「オール・ドメイン(全領域戦)」の視点から捉えるべきだと強調する。オール・ドメインとは、陸海空に加え宇宙・電磁波・サイバー領域、さらに情報、認知、経済といった領域も含む。こうした視点をベースに分析することで、複雑化した国際情勢が立体的に浮かび上がる。

 さらに3人は、今回の戦争から日本が教訓とすべき点を導き出す。将来、起こりうるかもしれない台湾有事に触れ、オール・ドメイン戦を前提とした安全保障態勢を構築すべきとする。

 ロシアの行為は「世界秩序に劇的な変化をもたらす」と渡部氏は語る。この変化に日本はどう対応すべきか。本書はその方向性を示す一助となるだろう。(ワニブックスPLUS新書刊、1100円)

最新ニュースLATEST NEWS