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ブックレビュー

「日本がウクライナになる日」 河東 哲夫著


 第2次世界大戦後、世界を安定させるために創設された国際連合。その常任理事国であるロシアが正規軍を用いてウクライナを侵略している。この事態について、元外交官でソ連・ロシアでも勤務した著者が、自身の経験を生かして多角的に分析、一冊にまとめた。

 著者は1970年に外務省入省、ソ連・ロシアには4度駐在し12年間勤務した。退官後は日本政策投資銀行の上席主任研究員などを経て、これまでの経験を生かした評論活動を行っている。

 ロシア経済は未だに天然資源に依存し、実態としても社会主義経済を継続。北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大への不信感だけでなく、経済的に「植民地」が必要なロシアの状況から侵攻に踏み切ったプーチン大統領の判断は、狂ってはいないが19世紀までの世界に住み、アメリカと対等であるとの認識をもっていると分析する。

 日本はこうした指導者が正規軍で近代国家を侵攻した事実を直視し、軍事について善悪二元論から脱し「タブーを外して何をするか」を考えなければ、もう間に合わない。イマジネーションを働かせて議論し、課題解決すべきと、著者は本書の中で強く訴える。

 (CCCメディアハウス刊、1430円)

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