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ブックレビュー

「日豪の安全保障協力― 『距離の専制』を越えて」 佐竹 知彦著


 著者はオーストラリアの安全保障政策を専門とする防衛研究所政策研究部防衛政策研究室の佐竹知彦主任研究官(43)。

 本紙『朝雲』の新シリーズ「防研セミナー・時代を読み解く」の第1回「AUKUSの誕生と豪州」(1月27日付)をはじめ、防研が今月緊急出版した『ウクライナ戦争の衝撃』の豪州の章を執筆した日豪安全保障関係史の第一人者でもある。

 近年、日豪間では共同訓練がかつてなく盛んで、今年1月には自衛隊と豪軍による相互訪問時の運用を円滑化する「円滑化協定」に両国首脳が署名するなど、安保協力が急速に強化されつつある。

 共に民主主義的価値観を持ち、米国と同盟を結ぶ日豪両国が、どのようにして太平洋という距離を越えて「準同盟」と呼ばれるまで関係を深化させてきたのか。

 戦後の両国の安全保障協力の軌跡を丁寧にたどっていくと、日本とは戦略環境も脅威認識も異なる豪州が冷戦後、一貫して日本へのアプローチを強化してきた背景が浮かび上がってくる。

 日豪の安全保障協力について日本語で書かれた初の学術書であり、両国が進むべき道標(みちしるべ)を示した著者渾身(こんしん)の一冊だ。

 (勁草書房刊、4180円)

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