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ブックレビュー

「リスク大国 日本 ~国防 感染症 災害~」 濱口 和久著


 新型コロナウイルスの世界的感染拡大で人々の生活が一変する一方、北朝鮮の度重なるミサイル発射、中国の軍事活動の活発化など、日本周辺の情勢の厳しさは増している。災害のリスクも高く、複合型の有事の可能性もある。この我が国の状況に対し、著者は「オールハザード型」の危機管理の必要性を訴える。

 拓殖大学大学院特任教授と防災教育研究センター長を務める著者は、陸自勤務の後、地方自治体で危機管理・防災担当などを歴任した。

 本書では日本の防災行政について、防災担当相がいくつもの担当を兼務し、防災担当職員の専門性が育ちにくいこと、前例主義での課題解決では緊急時に方針を決められないことなど、数々の問題点を指摘。これらに対して、地方自治体で防災担当者の専門性を向上、「活動できる防災士」を養成することなどを提案している。

 相次ぐ災害派遣により自衛隊への国民からの支持率は高い。しかし本来の任務は「国防」である。地域防災力を強化し、災害対応を担う行政機構をはじめ、幅広い分野への見直しに言及し、オールハザード型の危機管理への転換を求めた一冊だ。

 (グッドブックス刊、1650円)

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