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ブックレビュー

「戦後日本の安全保障」 千々和 泰明著


 著者は、精力的な執筆活動で知られる防衛研究所戦史研究センター安全保障政策史研究室の千々和泰明主任研究官(43)。

 「日米同盟、憲法9条からNSCまで」を副題に、最新の研究成果を踏まえ、▽日米安全保障条約▽憲法第9条▽防衛大綱▽日米ガイドライン▽NSC(国家安全保障会議)――の誕生秘話に迫りつつ、そこに潜む問題点をあぶり出す。

 憲法9条は、日本政府とGHQとの間で、天皇制を廃止しない代わりに日本の軍国主義の牙が抜かれたことを世界に示すため、新憲法の中に「戦力不保持」条項を盛り込む“バーター取引”の産物であり、かつ、米軍による「沖縄の軍事要塞化」を前提に「本土の戦力不保持」が定められたこと。自衛隊が「警察」予備隊としてその場しのぎで作られ、その合憲性を守るための「手品(捨て石)」として、集団的自衛権行使の違憲論が編み出されたこと――など、知られざる歴史的背景をひもといていく。

 戦後の一時期の試行錯誤の結果、その場しのぎで作られた仕組みがその後の安保政策を長く“呪縛”してきた実情を白日の下にさらし、今後の日本の安全保障の在り方を議論する上で本質を鋭く突いた一石を投じている。

 (中央公論新社刊、990円)

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