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ブックレビュー

「陸上自衛隊戦車戦術マニュアル」 あかぎひろゆき著、かのよしのり監修


 装甲車帽のヘッドセットから伸びたコードを車載無線機に接続、メインスイッチを入れる。車長の「運転はじめ」の号令で戦車のエンジンを始動。徐々に動き出す車体のスピードを、グリップハンドルで調節する――。本書を読むと、あたかも自分が戦車をコントロールしているかのような感覚が味わえる。筆者はあかぎひろゆき氏。補給統制本部や関東補給処航空部などに勤務した元陸自の軍事ライターだ。

 「戦車戦術」とは、「陸戦における戦車の運用および作戦と、戦車固有の戦闘技術を総称したもの」と筆者は説く。冒頭で紹介したように、本書には戦車の操縦法から特殊地形での通過要領、敵車体との距離の測り方に射撃方法まで記載されている。さらに、戦車の発展の歴史や、今日の日本をとりまくアジア情勢を分かりやすく解説。広い視野から戦車を捉えており、ただのマニュアル本とは一線を画している。

 近年は「ドローンや無人攻撃機さえあれば戦車は不要」との意見もある。しかし「着上陸した敵を海へ追い落とす“衝撃力”は戦車にしかないものだ」と筆者は強調する。本書は、戦車が単なる通常兵器に留まらない、平時における抑止力の一端を担う必要不可欠なものなのだということを、再認識させてくれる。

 (秀和システム刊、2420円)

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