創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

「ブランデンブルク隊員の手記 ―出征・戦争・捕虜生活」 ヒンリヒ=ボーイ・クリスティアンゼン著、 大木 毅監訳、並木 均訳


  ロシア軍による侵攻で戦地となったウクライナは第2次世界大戦中の独ソ戦でも主戦場となり、ドイツ軍は親独派のウクライナ人のレジスタンスらと共にソ連軍と戦っていた。

 本書は、1942年にわずか18歳でドイツ軍の特殊部隊「ブランデンブルク」に入隊し、最前線で任務に従事した元隊員による回想録だ。

 当時の自身の日記を基に、部隊の特性やソ連における対パルチザン作戦での夜間の待ち伏せ斥候、首都キーウ北方のプリピャチ湿地帯での作戦行動など各種活動を克明に描いている。

 著者は敗戦後、捕虜や「戦犯」としてソ連に抑留され、10年の長きにわたり労働収容所や刑務所での服役を経験。ここで出会った独空軍エース・パイロットのエーリヒ・ハルトマンとの交流や日本人捕虜の描写など興味深い内容もつづられている。

 これまで活動が明らかにされてこなかった部隊に在籍した著者の証言は貴重であることはもちろん、巻末には部隊の沿革や構成などがまとめられるなど、史料的価値のある一冊だ。

 (並木書房刊、2640円)

最新ニュースLATEST NEWS