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ブックレビュー

「中国の航空エンジン開発史 ―国産化への遠い道」 榊 純一著


  著者は石川島播磨重工業(現IHI)でジェットエンジン開発の陣頭に立ってきた技術者で同社の元常務執行役員。1994年に民間企業から初めて防衛研究所の「一般課程」に指名登用され、約10カ月間の研修を受けた時から追究してきたテーマを本書として完成させ、世に送り出した。

 中国は航空宇宙分野で目覚ましい発展を遂げる一方、依然として航空機の性能を100%発揮させるジェットエンジンを自主開発できず、それが「唯一の弱点」となっている。

 本書はこの点に焦点を当て、中国が国内で初めてエンジンを組み立てた1956年から現在まで約60年間のジェットエンジン開発の歴史を詳(つまび)らかにし、その実情に迫る。

 防研で94年当時、著者の卒業論文の指導に当たった拓殖大学名誉教授の茅原郁生氏(元陸将補)は巻頭に推薦文を寄せ、「本書は単に中国の脅威をあおるのではなく、中国エンジン開発の実態を客観的に分析している点でほかに類書がない」と高く評価。中国の軍事を技術面から論じた著作が少ない中、「防衛関係者はもちろん、政治家、研究者、報道関係者にとっても必読の書だ」と綴(つづ)っている。

 (並木書房刊、1980円)

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