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ブックレビュー

「世界滅亡国家史」 ギデオン・デフォー著、杉田 真訳


 あるときは「変人のせい」で、あるときは「他国に振り回されて」、またある時は「暇すぎて」――。およそ馬鹿馬鹿しいと思われるような出来事で、国家は簡単に歴史の波間に消えてゆく。本書は、そんな為政者の愚行や不運の果てに地図上から消滅した48の国々を紹介する、いわば「国家の追悼記事集」だ。著者は英オックスフォード大学で考古学と人類学を専攻した作家であり、アニメ脚本家のギデオン・デフォー氏。

 消えた国家といえば「バイエルン王国」や「ユーゴスラビア」などが有名だ。だが、本書はさらに踏み込み、治外法権が成立したがゆえに“国家”扱いとなった「オタワ市民病院産科病棟」や、20分でインドに占領され消滅した「シッキム王国」、詐欺師がつくった「ポヤイス」など、初めて目にする国々も取り上げる。

 国が亡びる理由はさまざまだ。しかし、どんな強国も、繁栄が永遠に続くことはありえないということを著者は浮き彫りにする。消滅の影には必ず、悲しくも愚かしい人間の営みが繰り広げられるのだ。

 ありそうでなかった「滅亡国家」という分野に光を当てた本書は、通り一遍の世界史では決して学べない、新たな視点を読者に提示してくれるはずだ。

 (サンマーク出版、1650円)

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