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ブックレビュー

「至誠の日本インテリジェンス ―世界が称賛した帝国陸軍の奇跡」 岡部 伸著


 ロシアによるウクライナ侵攻が激しさを増す中、終戦後の旧ソ連軍による侵攻から北海道本土を守った樋口季一郎陸軍中将の功績が注目を集めつつある。産経新聞論説委員の著者が樋口中将をはじめ、小野寺信少将、藤原岩市中佐の3人の帝国陸軍人にスポットを当て、そのインテリジェンス(諜報)の実態について綴る。

 最初に北欧スウェーデンの駐在武官だった小野寺少将の功績に触れ、他国の情報将校から“諜報の神様”と慕われていたことに言及。ドイツの敗戦を予測し、大本営に対米開戦反対の電報を打つなど、精度の高い諜報の舞台裏を描く。

 樋口中将については旧ソ連による北海道占領を阻止した自衛戦争に加え、ポーランド駐在武官としての人脈作り、ユダヤ人を救った人道的決断の軌跡をたどる。最後に、インド人に寄り添い、イギリスが脱帽するインテリジェンスを発揮した藤原中佐の人柄などを紹介する。

 3人の共通点である誠心誠意をもって行う“至誠”の諜報活動と決断は、情報戦が繰り広げられる現代でも、国益を守る上での資となるだろう。

 (ワニブックス刊、1650円)

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