創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

「補給戦 増補新版」 マーチン・ファン・クレフェルト著 石津 朋之監訳・解説、佐藤 佐三郎訳


 「補給こそが戦いの勝敗を決する」ことを初めて明快に論じ、ロジスティクス(兵站)の研究の先駆けとなった名著の新装版だ。

 著者はイスラエルの歴史学者・軍事学者で、ヘブライ大学歴史学部の名誉教授。著者と親交のある防衛研究所戦史研究センター長の石津朋之氏が監訳・解説を務めた。

 副題は「ヴァレンシュタインからパットンまでのロジスティクスの歴史」。16世紀以降のナポレオン戦争などから二度の大戦までの代表的な戦闘を「補給」の観点から徹底的に分析し、戦闘への影響などについて弾薬、糧食等の具体的な数値と計算に基づいて説明する。

 本書は、2006年に中公文庫として刊行された『補給戦』(原著ケンブリッジ大学出版、1977年)を石津氏が全面的に校訂。さらに、2004年に同大学出版から刊行された第2版の補遺(石津訳)を増補し、文庫版には掲載されていなかった原注・参考文献が加えられた。

 最終頁に今回新たに盛り込まれた「戦争のプロはロジスティクスを語り、戦争の素人は戦略を語る」と題した石津氏による解説は、翻って我が国の直面する課題を考える上で必読の章となっている。

 (中央公論新社刊、2970円)

最新ニュースLATEST NEWS