創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

「江戸幕府の北方防衛」―いかにして武士は「日本の領土」を守ってきたのか 中村 恵子著


 本書は医療法人を経営するかたわら、「チャンネル桜北海道」のキャスターを務める著者が、江戸幕府の対外政策がいかに合理的で優れた政策だったかを数々の事例を踏まえて解説した歴史書。

 江戸前期において、スペインやポルトガルなどが布教を目指した「キリスト教」の禁教と「鎖国」政策を挙げ、キリスト教布教を先兵として領土を奪取しようとする外国勢の思惑を鎖国政策で見事にはね返した意義を語る。鎖国を「国益にかなう国とだけ関係をもち、国益を損なう国との関係を遮断するもの」と分析している。

 また、蝦夷地を支配した松前藩が「近代日本の礎となる重要な役割を担っていた」ことをもっと多くの日本人に知ってほしいと訴える。

 江戸後期においては、本書の主題である「北方防衛」に幕府が対応せざるを得なくなる状況について詳説する。東方へ関心を向けた「ロシア」に対して、幕府や東北諸藩の武士たちが命がけで国を守ってきたという事実は、今般のウクライナ情勢を考えた時に、より現実的な問題として読者に迫る。

(ハート出版刊、1980円)

最新ニュースLATEST NEWS