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ブックレビュー

「〈軍港都市〉横須賀~軍隊と共生する街」 高村 聰史著


 2000年から17年間にわたり「新横須賀市史」の編纂に携わった著者(現・国学院大学文学部兼任講師・世田谷区史編さん室)が、貴重な史料を基に「軍港都市横須賀」の歴史をひもといていく。

 三浦半島の「寒村」にすぎなかった横須賀は、幕末の製鉄所・造船所建設や明治の鎮守府設置など、海陸軍の関連施設に依存しながら日本初の「軍港都市」へと発展を遂げていった。

 著者は、特に人々の暮らしと海軍の歴史という社会経済史の側面に焦点を当て、▽近代海軍の建設から戦争、敗戦へと至る過程において一寒村から一大軍港都市へと成長した横須賀の市民と海陸軍がいかに共生してきたのか▽地域の中に存在する軍隊とはいかなる存在であったのか▽海軍や陸軍の恩恵を被りつつも、内なる矛盾と葛藤しながら軍港都市として発展を続け、敗戦ですべてを失っていく姿――を丹念に描き出している。

 近年、「海軍カレー」に代表されるように、再び観光資源としての旧海軍という「歴史資源」に回帰している横須賀。その知られざる過去を奥深くまで探求することのできる一冊だ。

 (吉川弘文館刊、2310円)

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