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ブックレビュー

「戦術の名著を読む」木元寛明著


 「いかなる部隊も指揮官の能力以上の力量を発揮できない。指揮官の戦闘能力の限界がすなわち部隊の戦闘能力の限界だ。そこに戦術を学ぶ意義がある」――。筆者は2000年に自衛隊を陸将補で退官後、戦史・戦術研究に専念。本書では19世紀の軍人・ジョミニや大日本帝国海軍の秋山真之、さらに米軍人のW・G・パゴニスなどを取り上げ、13の名著から戦術に欠かせないエッセンスを紹介する。

 前半は戦術の歴史と基礎を「戦争概論」(ジョミニ)や「戦理入門」(戦後の青年幹部自衛官を対象に刊行)に触れつつ解説。秋山真之が留学中にジョミニやナポレオンを精読し、後に日本海海戦の決定打となった「丁字戦法」を編み出したエピソードは興味深い。

 後半では情報や後方支援、戦場心理など、戦争の「裏側」ともいえる分野に光を当てる。「山・動く―湾岸戦争における経営戦略」(パゴニス)を例に取り、湾岸戦争時に素早く兵站ラインを確保した米軍のダイナミックさと柔軟さを「見習うべき」と強調。また戦場における心理を無視しては、いかなる作戦・戦闘も成り立たないと指摘する。

 一般には手に入りにくい貴重な文献も紹介しており、戦術の概略を学ぶ入門編として本書はうってつけのガイドとなるだろう。

 (祥伝社刊、1012円)

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