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ブックレビュー

「八甲田雪中行軍 一二〇年目の真実」 間山 元喜、川嶋 康男著


 明治35年1月、極寒の青森・八甲田山系で旧陸軍の部隊が遭難した八甲田雪中行軍。青森歩兵第5連隊の隊員199人が凍死し、尊い命を落とした。一方、別ルートで雪中行軍に臨んだ弘前歩兵第31連隊は任務を完遂し、全員が帰還した。

 本書は、二つの部隊の明暗を分けた真実に迫るドキュメンタリー。著者の間山氏は弘前隊の一員として行軍に参加した間山仁助伍長の孫にあたる陸自OBで、定年退官後、祖父のたどったルートを実際に歩き、自身の足で検証した。

 弘前隊の当時の様子を指揮官・福島泰蔵大尉の秘蔵資料や間山伍長の日記、当時の写真などを用いて分析。青森隊の行動については生還した隊員の証言をまとめている。本部の対応、当時の報道内容なども詳細につづっている。

 「福島大尉の『危機管理』の内容は現代にも通用することが読み取れる」と著者。

 巻末には行軍で得られた調査報告を掲載しており、現代にも生かせる山岳遭難の教訓として学ぶことが多い一冊だ。

 (冨山房インターナショナル刊、1980円)

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