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ブックレビュー

「捨てない生きかた」 五木 寛之著


 新型コロナの感染拡大による外出自粛などで在宅時間が長くなり、部屋を片付けたり、フリマアプリや出張買い取りサービスなどで「断捨離」を行う人たちが増えている。直木賞作家で数々の文学作品を送り出してきた著者は、その風潮に抗うように「捨てない生きかた」に素敵な道理があるという。卒寿を迎えようとする著者がこれまでの人生経験を振り返り、捨てない意義を示す。

 著者は捨てずにとってあるモノから記憶を呼びさまし、そうしたモノが自分にとってかけがえのない「終生の友」となっていることを紹介。過去の記憶を噛み締めることで自分を支え、見えない明日へ向かって生きていくことの意味を綴る。

 自身の物品保持だけにとどまらず、法然と親鸞が捨てようとしたものや、かつて暮らしていた石川県金沢市についても言及。歴史やその背景に思いを巡らすことで得られるものについて記す。

 戦前からの激動の時代を生き、思索を重ねて辿り着いた著者の境地に触れられる一冊。後半生を豊かに過ごすヒントが随所にあり、「人生の宝物」である“ガラクタ”を手放す前に読んでおきたい。

 (マガジンハウス刊、1000円)

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