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ブックレビュー

「能登半島沖不審船対処の記録」 木村 康張著


 近年、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮は約20年前、日本の沿岸に不審船を度々送り込んでいた。本書では平成11年の「能登半島沖不審船事案」に対応した海自4空群6航空隊(厚木)で、P3C哨戒機の機長を務めていた著者だからこそ記せる、事案の全体をまとめた迫真のドキュメント。なお戦後初の「海上警備行動」が発令されたのは同事案である。

 本書は日本人拉致事件や緊迫する朝鮮半島情勢など当時の背景を示した上で、不審船の発見から対応した防衛庁(当時)・自衛隊、政府、関係省庁の動きが時系列で詳細にまとめられている。その中で中央と現場において、与えられた使命と諸外国と異なる特有の法的課題の間で苦悩しながら事態対処に向けて決断し、任務を遂行した自衛官たちの姿が描かれている。

 後半部分では、この事案への対処を経て法的課題は改善されつつあるが、残された課題もあると指摘している。

 20年前の事案をまとめた本書は、グレーゾーン事態への対応が話題に上る昨今だからこそ、多くの隊員にとって教訓が得られるという点で、一読の価値がある。

 (芙蓉書房出版、2200円)

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