創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

　来月開幕予定の北京冬季五輪だが、バイデン米政権などが政府当局者を派遣しないとする「外交ボイコット」を表明、日本も同五輪への政府代表団派遣を見送るなど、中国の人権問題への抗議が国際的なうねりとなりつつある。

　発端となった新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル族や香港メディア、運動家への弾圧などの実態に、元産経新聞香港支局長でジャーナリストの著者が鋭く切り込む。

　本書では主に、著者の現場での取材とその人脈で得た中国の情報をもとに構成。ウイグル人の１０人に１人が強制収容所に収容されていることや香港警察の過度な取り締まりなど、日本では報じられない中国の実態をひもとく。

　さらに歴代国家主席の中でも習近平氏が特異であることの背景や中国人民解放軍の実力、自衛隊への評価についても言及。権力集中の構造や見えない戦争「超限戦」について解説し、急速に複雑さを増す中国の狙いを論じる。

　実際の取材をもとに、不正や弾圧に抗う市民らに寄り添った著者の多角的な中国分析は圧巻。読後には五輪開催で中国が批判される理由が明確に理解できるだろう。

　（ワニブックス刊、９９０円）