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ブックレビュー

「安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010 『基盤的防衛力構想』の時代」 千々和 泰明著

  著者は防衛研究所戦史研究センター安全保障政策史研究室の千々和泰明主任研究官。新たな切り口で、戦後日本の安全保障と防衛力をめぐる政策史の実像を浮き彫りにした今年度「第7回猪木正道賞」の受賞作だ。

 冷戦期のデタント(緊張緩和)の時代に当たる1976年に導入された「基盤的防衛力構想」。本来は時代と共に変わっていくはずの防衛構想が、その後も米ソ「新冷戦」の到来、冷戦終結、さらには9・11米同時多発テロを経て、2010年に至るまで34年間の長きにわたって日本の防衛構想であり続けた理由は何だったのか――。

 日米の膨大な史料はもちろん、当時の貴重な記録や証言、さらには自らも背広組・制服組、現役・OBを問わず多くの防衛省(庁)・自衛隊関係者等に独自のインタビューを行った上で裏を取り、分析を重ね、その「謎」を解き明かす。

 防衛大綱・中期防の改定に向けた作業が始まった今だからこそ、これまでになかった通時的な観点から防衛構想の変遷を振り返る意義は大きい。

 学術書でありながら、その展開はテンポよく明快で、多くの示唆に富んだ第一級のドキュメンタリー作品でもある。

(千倉書房刊、6050円)

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