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ブックレビュー

「『日本分断計画』 中国共産党の仕掛ける 保守分裂と選挙介入」  上念 司著

 核抑止力が機能する限り、莫大な数の死者を出す世界大戦の勃発は考えづらい。しかし、戦争の手法は年々複雑かつ巧妙化し、敵がどこにいるのか、誰が敵なのかさえ分からない時代に突入している。私たちが気づかないうちにSNS上では日本も徐々に侵略されつつあると警告を発するのが、著者の言う「日本分断計画」である。

 例えば、2020年の米大統領選の結果に納得しなかった日本国内の言論人の一部が、前大統領の落選に執拗に疑義を示し続け、見解を異にする著者を攻撃。保守派内の内ゲバである。

 日本分断を企図する勢力は、国内での言論を通して「尖閣諸島上陸」など敢えて高いハードルを掲げ、世論を煽る。そして保守派言論人に賛否の踏み絵を迫ることで急進派と穏健派の間に埋めがたい亀裂を引き起こす。本来は左派の暴走に対抗すべき保守派の分裂で誰が得をするのか考える必要があると著者は問う。

 一見ハッキリとした物言いは爽快だが、事実は単純ではない。情報の大波に飲み込まれないよう、事実と高い見識に基づいた判断力をもってしか、日本分断計画を止める手立てはない。
(ビジネス社刊、1540円)

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