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ブックレビュー

「『防衛外交とは何か』 平時における軍事力の役割」 渡部 恒雄、西田 一平太編

 近年、軍事アセット(武器や装置など)を使って相手国との関係強化や地域の安定化を図る「防衛外交」が注目されている。本書は笹川財団の安全保障研究グループ「日本の防衛外交」が、長年の研究成果としてまとめたもの。13人の執筆陣は安全保障問題の第一人者である渡部恒雄氏をはじめ、鶴岡路人慶応大学准教授や3自衛隊の元幹部らが並ぶ。

 「防衛外交」という概念は、そもそも冷戦後の欧州で旧社会主義国との関係構築上で登場したものだ。本書ではまず、この防衛外交の定義と理論について整理、続いて日本における防衛省・自衛隊の取り組みを紹介する。松村五郎元陸将、武居智久元海幕長、荒木淳一元空将らによる自衛隊の防衛外交の実績の解説は、現場を経験した人ならではの具体例と示唆に富み、今後の在り方を占う上で重要な視点となっている。

 さらに、諸外国の事例も検討。とくに「先駆者」である英国は知見の蓄積が多大であり、参考にすべき点が多いとする。重要性が増す防衛外交の動向を本書は多面的に分析しており、日本の安全保障を考える上で押さえておきたい一冊だ。

 (頸草書房刊、4400円)

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