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ブックレビュー

「F―Xの真実」 次期戦闘機をめぐる 日米の政治と技術の攻防史 相良 静造著

 「国を護るのに、なぜ使う道具(装備品)を選ぶ際にぎくしゃくするのか」――。ジャーナリストの筆者はこうした問題意識から、70年に及ぶ日本の国産の戦闘機開発と、それに携わった人々の歴史の真実を明らかにする。本書は月刊誌『航空ファン』(文林堂)に寄稿した連載を、加筆してまとめたもの。

 先の大戦で敗れた日本は、占領軍から航空機に係るすべての開発が禁止された。ここから「もがれた翼を取り戻そう」と、航空技術者の奮闘が始まる。筆者は膨大な資料を元に、彼らの「国産」への熱い思いが今日まで連綿と続いていることを紹介する。

 一方で、日本の戦闘機開発はその時々の国際情勢に大きく左右され続けてきた。本書では「日米同盟最大の危機」と評される第2次FSX(F2戦闘機の開発)を巡る攻防を明らかにしていく。貿易摩擦を背景に圧力をかける米国と、けん制する日本。筆者はこの時の「深手」がF2の正当な評価を妨げていると指摘する。また最新の次期戦闘機(FX)については、他国と柔軟に共同開発を進めるため、「F2開発を教訓とすべき」とする。

 歴史を振り返りつつ、今後、日本の戦闘機開発のあるべき方向性を指し示してくれる一冊だ。
 (秀和システム刊、1980円)

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