創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

　在ロシア防衛駐在官を務めた情報のプロ（元海将補）が、サイバーなどハイブリッド戦を駆使してウクライナからクリミア半島を奪ったロシアの情報戦の思想と、その戦い方を明らかにした書だ。著者はロシア語が堪能で、特殊な文化を持つロシアの情報ピラミッドの中に自在に出入りし、露政府発の生情報をダイレクトに分析しているのが最大の特徴だ。

　著者は情報の原本を通して為政者の考えに迫り、公文書の行間を読み取り、ロシアの真意を解析し、それを読者に提供してくれる。自衛官時代には情報本部分析部課長、統幕サイバー企画調整官などを歴任した専門家だけに、露ハイブリッド戦の根幹となっている「ゲラシモフ論文（ドクトリン）」の分析などは圧巻だ。さらにロシアの安全保障観、外国への影響工作、ＡＩの軍事適用などは著者のモスクワでの実体験なども交え、西側とは異なる異形の大国の姿を描き切っている。

　（育鵬社刊、２７５０円）