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ブックレビュー

「戦争はいかに終結したか ―二度の大戦からベトナム、イラクまで」 千々和 泰明著

 戦後の日本人は「戦争終結」を考えることから目を背けてきたのではないだろうか――。

 著者は防衛研究所の主任研究官(戦史研究センター安全保障政策史研究室)で、「戦争終結」という日本では全くと言っていいほど研究されてこなかったテーマに焦点を当て、理論と歴史の両面から考察する。発刊後、大きな反響を呼び、重版も決定した話題の書だ。

 戦後の日本は戦争放棄の名の下に軍事が長らくタブー視され、日本の安全保障論議は「抑止」や有事における「初動対処」の域を出ていないと指摘。事態がエスカレートした場合、これをどのように収拾し、いかなる条件で講和を結ぶべきか。いったん始まった戦争を理性的に収拾するための方策に関する検討は手つかずのままだ。

 本書では「望ましい戦後の在り方が戦争終結の形態を決め、逆に戦争終結の形態が戦後の在り方に影響を与える」という視点に立って、20世紀以降の主要な戦争の終結過程を精緻に分析。

 その上で「根本的解決」と「妥協的和平」のジレンマを切り口に、真に平和を回復するための「出口戦略」を考え、これからの日本の安全保障を考えるためのヒントを提示している。 (中央公論新社刊、1012円)

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