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ブックレビュー

 「陸曹が見たイラク派遣最前線」伊藤学著 

 「これは訓練じゃない!撃たれてもおかしくない」――。2004年8~11月、第3次イラク復興支援群に参加し、現地で復興支援業務に従事した元陸曹の著者が、現地での体験を臨場感あふれる筆致で描いたルポルタージュだ。

 「戦場の空気を感じたい。戦場で自分の何が変わるか確かめたい」――そう意気込んでイラク・サマーワに赴いた著者を待っていたのは気温60度にもなる灼熱の環境、ロケット弾が撃ち込まれる極限状態での任務だった。冒頭の言葉が象徴するように、緊迫した当時の実情を知ることができる。

 そんな中でも本書で目を引くのは、著者が異国で出会った人々や仲間との等身大の交流だ。失敗や本音が余すところなく描かれ、「建前」ではなく体当たりで取り組んだ著者の刺激的な日々が鮮やかによみがえる。

 現場の陸曹ならではの人間味あふれる葛藤や発見の数々は必読。過酷な環境の中にいながらその状況を〝楽しむ〟著者の姿を追体験することで、海外任務の魅力を感じとれるだろう。
(並木書房刊、1650円)

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