創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

　　副題は「究極の男性組織に飛び込んだ女性たち」。著者は１９８７年生まれの防大５５期（女子１６期）生で、２０１１年３月に卒業後、陸自幹部候補生学校を中退。時事通信社の記者などを経て、現在はフリーランスとし執筆活動を行っており、本書が初の著作となる。

　自身の経験と人脈だけでなく、防衛省や防大同窓会にも協力を得て、９２年入校の「女子１期生」から現役防大生、さらには現役・退役を問わず多くの防大ＯＢ・ＯＧの話を丹念に聞き込み、防大女子たちの悲喜こもごもの日常を活写している。

　内容は、▽入校の第一関門、髪を切る▽テレビなし、腕立て伏せに「これが防大か」▽わずか５日で１割退校▽汚い東京湾で毎日水泳訓練▽愛と僻みが渦巻く内部恋愛事情▽「女のくせに」と目立てば悪評▽ロールモデルの不在とはびこるハラスメント▽仕事と家庭生活の両立――など多岐にわたり、一般社会にも共通する根深い問題を浮き彫りにしている。

　著者の視点は温かく、母校と自衛隊に対する愛情があふれている。ここに収められた多数の「声」は、官民問わず、多くの働く女性たちの応援歌となるだろう。
（ワニブックス刊、９９０円）