創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
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ブックレビュー

「現実主義者のための安全保障のリアル」 兼原信克著

  『朝雲』1面のコラム「春夏秋冬」でも健筆をふるう元外交官の著者(元・内閣官房副長官補兼国家安全保障局次長、現・同志社大学教授)が、米中対立により緊張が高まる東アジア情勢を分析し、日本の新たな「対中戦略」を提言した書だ。

 中国の指導者は若い頃に「150年にわたり自国を蹂躙(じゅうりん)された屈辱の歴史を教え込まれ、愛国主義をたぎらせている」と述べ、中国版レコンキスタ(再征服活動)とも言うべき「歴史の復讐戦」に乗り出しているとする。そこで狙う最後の獲物が「台湾の回復」であり、共産党にとって「台湾奪取が栄光の最終章」だとする。

 著者は「中国は必ず台湾、(沖縄の)尖閣奪取に動く」と見ており、その手段はサイバー、情報、核を前面に出したハイブリッド・ウォーになると予測。危機感のない日本はこのままでは太刀打ちできないとし、今こそ自由主義陣営を結束させて中国の行動を抑止すべきだと強調、その切り札がまもなく中国を凌駕(りょうが)する「大国インドとの連携」であると述べている。

 日本の若い世代は自分たちの将来を憂い、「現実主義的な安保論争を求めている」と指摘、古い体質の政治家やメディアは「からくり仕掛けの安保国会劇場の幕を下ろすときだ」と強く訴えている。
(ビジネス社刊、1650円)

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