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ブックレビュー

「気候安全保障」 地球温暖化と自由で開かれたインド太平洋 笹川平和財団海洋政策研究所編

 地球温暖化で新たに生じる気候変動のリスクと、これに大きく影響を受けるインド太平洋地域の安全保障について「気候」を切り口に分析した研究書だ。

 気温の上昇が進み、地球規模で猛暑、旱魃(かんばつ)、山火事、大雨などの自然災害が多発している。この結果、食料や水が不足し、途上国では政治・経済・社会が不安定化、そこから難民流出をはじめ、略奪やテロなどの暴力が増え、紛争が生じることも予想される。本書は海面上昇などで直接影響を受けるインド太平洋地域を中心に「気候安全保障」について考察。執筆者は海洋政策研究所の研究者らで、温暖化が地球に与える影響、気候変動によって生じるリスク、島国日本が受ける影響、国際社会の温暖化への取り組みなどについて解説している。

 日本政府に向けては気候安保にしっかりと取り組むよう提言、特に低地(島)水没の危機がある国々を束ねて「太平洋・島サミット」をリードしていくべきだとし、新たな概念「総合的気候安全保障」を日本が主導していくべきであると述べている。

 (東海教育研究所刊、4180円)

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