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ブックレビュー

「双翼の日の丸エンジニア」 ゼロ戦と飛燕の遺伝子は消えず 戸津井 康之著

 日米が開戦する前の1930年代末、当時、技術力の低かった日本がなぜ米英軍の主力戦闘機に勝る「零戦」や「飛燕」といった高性能機を開発し、大量生産し、運用することができたのか。本書は戦後に引き継がれた両戦闘機の遺伝子に焦点を当て、“ものづくり”に懸ける日本人の創作魂を追求したノンフィクションだ。

 「零戦」を設計した堀越二郎と世界最速を目指した「飛燕」の設計者、土井武夫らは敗戦により航空機開発の表舞台から消えたかに見えたが、2人は戦後、教育者としての役割を担い、教え子たちに彼らの不屈のエンジニア魂はしっかりと受け継がれていた。

 その結晶ともいえるのが「未来技術遺産」に登録された傑作カメラ「ミノルタα7000」と伝説のモンスターバイク「カワサキZ1」だった。最終章では「零戦」「飛燕」と血のつながった「ミノルタα7000」を開発した葛城衛と「カワサキZ1」を作り上げた百合草三佐雄と著者による鼎(てい)談(だん)も掲載。ここから堀越、土井ら技術者の遺伝子はいまも日本の各メーカーのエンジニアたちにしっかりと伝承されていることが分かる。

 (学研プラス刊、1980円)

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