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ブックレビュー

「中国『見えない侵略』を可視化する」 読売新聞取材班著

 読売新聞の連載「安保60年」の記事に新たな取材内容を加え、日本にこれまで欠落していた「経済安保」の問題点を扱った書だ。中国の西側からの知的財産や先端技術のさまざまな入手法を明らかにしている。

 中国政府の経済政策「中国製造2025」では、建国100周年までに「世界の製造大国」としての地位確立を目標に掲げる。この技術覇権を実現するため、中国は高い報酬を約束して「千人計画」と呼ばれるヘッドハンティングを進め、外国から高度な技術を入手、これを軍事技術にも転用している。

 本書では手段を選ばない中国の技術窃取を追い、世界の主要都市に置かれた「孔子学院」は「トロイの木馬」の役割を担い、留学生や研究者を現地シンクタンクに送り込んで技術を取得しているという。さらにサイバー攻撃や「バックドア」のあるアプリを使って不法に情報を入手し、海底ケーブルからの通信傍受まで行っているという。

 こうした侵略に日本はどう対処したらよいのか。安倍政権下、国家安全保障局に「経済班」が発足するなど政府もようやく本腰を入れ始めたが、まだ体制は不十分で、留学生のビザ審査の厳格化や研究者のセキュリティー・クリアランスなどが必要だとしている。

 (新潮社刊、858円)

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