創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

「権威主義の誘惑」―民主政治の黄昏  アン・アプルボーム著、三浦元博訳

ソ連の崩壊後、西欧を手本に民主主義国として歩み始めたポーランドやハンガリーがいま再び権威主義体制に戻りつつある。東欧だけでなく、ドイツ、フランス、スペインなどでも極右政党が躍進するなど、時代は大きく変化している。本書はトランプ米政権下で進んだ西側の民主政治の衰退と、現在、世界で見られる権威主義の台頭について考察した書だ。著者は米国の歴史家・ジャーナリストで、ソ連・東欧の政治体制をテーマにした書でピュリツァー賞を受けている。

著者と交流のあった各国の「リベラル派」たちが今日、権威主義に急速に傾斜しつつあることに驚き、何が彼らを変えてしまったのか論考を進める。中・露の躍進などから権威主義が国力強化に役立つことを知った各国はその政治手法を取り入れ、欧米の民主政治から距離を置き始めた。この世界的な現象の根底には何があるのか?

「わたしたちはすでに民主政治の黄昏(たそがれ)を生きている可能性がある」と著者。アフガン撤退に象徴される米主導の民主主義の後退とともに、変わる世界の潮流をレポートした警世の書だ。

(白水社刊、2420円)


最新ニュースLATEST NEWS