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ブックレビュー

「新・階級闘争論」 門田隆将 著

 マルクスとエンゲルスによる「共産党宣言」で高らかに謳(うた)われた階級闘争を著者が皮肉を交えて書名に据えたのが本書である。差別や差異をことさら強調することで被害者意識を生み出し、一種の階級闘争を仕掛ける手法によって日本社会を破壊し、日本人を貶(おとし)める数々の運動を著者は激しく批判する。一方で、「難癖」に対して容易に屈する言論人に対しても憤りを隠さない。

 例えば、著者はかつて籍を置いた出版社の対応を激しく批判する。ある国会議員がLGBTカップルへの税金投入を「生産性」という言葉を使い疑問を呈した論文が非難を浴びた。それを擁護する文芸評論家の論文もまた「痴漢する権利を認めよ」と一部で解釈され炎上した。主張の是非はともかく、出版社は筆者と言論空間を守ることを放棄して、激高する一部「世論」に迎合し、寄稿者の梯子(はしご)を外した。これを著者は「出版社が使命を放棄する愚行」として容赦なく非難する。

 「僕は君の意見には反対だ。しかし、君がそう主張する権利は、僕が命をかけて守る」。哲学者ヴォルテールの言葉を言論人の矜持(きょうじ)とし、著者は論壇のあるべき姿を訴える。

(ワック刊、990円)

小林武史(国会議員秘書)

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