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ブックレビュー

ステルス・ドラゴンの正体 宮崎 正弘著


 本書は、国際情勢・経済分析や、歴史を斬新な視点で見つめ直す書籍を精力的に刊行し続ける著者が、世界制覇の道を歩む中国の暗躍に、警鐘を鳴らすものだ。

 扱うトピックはニュース性が高く、ノルドストリーム爆破事件なども取り上げている。話題も幅広く、BRICSの通貨統一や中国が展開する認知戦など、紙幅に比べてとても広範にまたがっている。

 その分、詳しい説明や前後の文脈を省いている箇所も多く見受けられる。例えば「生命保険会社は、インソルベンシー(債務超過)を避けるため株式市場への上場をしないが、中国では生命保険会社も株式を上場していて目が点になる」という描写があるが、これは誤解を招きかねない。日本やアメリカなどの資本で株式公開している生命保険会社は多数あるためだ。

 また、暗号通貨の話題を展開していたかと思えば、次の文章で突然新型コロナワクチンの話になり、著者の脳内でさまざまなトピックが連関している様子に戸惑う向きもあると思う。

 しかし、疾走感あふれる文章には、中国の世界制覇を憂慮する著者の焦燥が現れており、“真実”に目覚めよと読者に叫んでいるようだ。

 (ワニブックス刊・1650円)

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