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ブックレビュー

大戦略の思想家たち 石津 朋之著


 著者は防衛研究所戦史研究センター長。ロシアによるウクライナ侵略で国家安全保障に関するテーマが身近になった今、自身の著書『大戦略(グランドストラテジー)の哲人たち』(2013年、日本経済新聞出版刊)を改題し、文庫化した。

 大戦略とは戦場の勝ち負けを超え、国家の命運を左右する最も次元が高い戦略だ。

 本書では、(1)英国の地理学者で「地政学の父」とも呼ばれるマッキンダー(2)英国の歴史家で今日の戦争学・戦略学を主導したハワード(3)米国の国際政治学者で核時代の抑止概念を確立したブロディ(4)米国の歴史家で対中外交やソ連とのデタントの実務者としても活躍したキッシンジャー(5)米国の国際政治学者ルトワック(6)イスラエルの歴史家で、クラウゼヴィッツの『戦争論』に真っ向から挑戦したクレフェルト――の6人の思想家を取り上げ、その本質に迫る。

 その上で著者は、現代の戦争は軍人や政治家だけに任せておくにはあまりにも重大な国民の事業(ビジネス)だと指摘。今こそ本格的な戦争研究のための組織と我が国独自の大戦略となる

「日本流の戦争方法」の構築が必要だと訴えている。

 (日経BP刊、1100円)

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